第41回目「ゆとりの法則 Slack」(トム・デマルコ著)(その3:最終回)

「熊とワルツを」に引き続き、デマルコの著書です。この本も常識として思っていたことを、いろいろと再考させてくれます。
この本に興味を持てば→ゆとりの法則 ? 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解
今回も各個所で気付くところがあり、3回シリーズとします。
1回目:第Ⅰ部 ゆとり、第Ⅲ部 変化と成長
2回目:第Ⅱ部 本当に速く仕事をするには
3回目:第Ⅳ部 リスクとリスク管理、考察(まとめ、気付き)

今日は3回目(最終回)です。

第Ⅳ部 リスクとリスク管理

  • すべての逆境を克服しようと思う組織:ごくちいさなリスクしかとれない→重大な敗北を経験したことのない組織:本当のリスクをとったことがない
  • リスク管理:成功計画の対極にある=「失敗計画」に関する規律である
  • リスク管理学:どの程度ゆとりが必要かを知るために役立つ
  • リスク:①それ自体悪いものではない、②完全にはなくらならない、③コストがかかる、④ポートフォリオ全体に適用される
  • リスク管理による制御:確定的ではなく、確率論的なものにすぎない
  • 各要素の不確定性の明示:全体的な成功の可能性を最大限に高めることができる
  • 賢明なリスクの管理をしなければ、組織は頑なにリスクを避けるようになる
  • リスク管理:不確定要素を数量化して明示すること⇔不確定であることを許さない企業文化もある
  • 「できる」型思想⇔リスク管理とは正反対のもの→リスク管理:「できない」可能性を率直に認めること
  • リスク:全体リスクと部分リスクがある
  • 全体リスク:ある仕事全体が失敗する可能性
  • リスク管理の肝心な仕事:「部分」リスク(原因リスク)を管理すること
  • リスクを管理しているとは:①リスクをリストアップ、②リスク発見のプロセスを継続、③予想される影響と確率を数量化、④リスク出現のトリガーを設定、⑤事前の対応計画
  • 部分リスクの影響が重なった場合:全体的な成功に関する不確定性がどのように決まるかを示すなんらかのモデルを作成する必要がある
  • 不確定性:リスク図で表される
  • リスク貯金:遂行する必要がないかもしれない仕事のために用意しておくコストと時間
  • 有効にリスクを軽減:事前の準備が必要=どのようなけ軽減措置が必要で、どのような準備が必要かを判断するための計画が必要
  • 事業上のリスクの軽減:事前準備が必要であるが、さほど認識されていない
  • 「成功計画」に基づくスケジュール:必要ないかもしれない仕事をする時間は組み込まれない
  • 各リスクに対する最低限の事前準備:リスクが実現した場合にやるべきことの計画を作成しておくこと
  • 「急げ、急げ」の呪文:知識労働者に危険速度で働くことを要求している
  • 危険速度で進むこと⇔リスク管理とは矛盾→リスクを管理:やや遅い速度で進む必要がある
  • リスクの軽減:リスク管理の中心になるもの
  • リスクの軽減ができない(将来、リスク抑制の行動を可能にするか、そのコストを抑えるための措置をいまとらない)=リスク管理はできない
  • 知的労働も「安全速度」で進めることを学ぶ必要がある→そのためのカギ:バラ色のシナリオだけでなく、リスク図全体を見ること
  • リスクを避けること=機会から逃げること
  • リスク管理のチェックリスト
    • ①リスクに関する調査結果が公表されているか。
    • ②新しいリスクを発見するためのしくみが確立されているか。
    • ③リスクの中に致命的になりうるものはあるか。
    • ④リスクごとに実現の確率、コストをスケジュールへの影響を数量化しているか。
    • ⑤リスクごとに実現を予測するための変化の指標を設定しているか。
    • リスク管理専門の担当者がいるか。
    • ⑦作業計画の中に、状況によって必要がなくなるかもしれない仕事が含まれているか。
    • ⑧プロジェクト全体に完成予定と完成目標の両方があり、予定と目標が大きく異なっているか。
    • ⑨予想完成日よりかなり前に完成する可能性は十分にあるか。



気付き
計画を立てる場合、リスクはある程度考慮していると思っているが恐らく十分でないところがあるため、プロジェクトの途中で狂い(ゆがみ)がでてくるのであろう。
企業文化についても書かれているが、成功計画に基づくスケジュールが大手を振って通っているのが現状ではないだろうか。
その他、リスクの考え方やフォローについては、このブログでも以前紹介した「熊とワルツを」を参考にして下さい。
全般についての考察
プロジェクトでも組織でも、個人についても、ある種の余裕を持たないと、変化の対応についていけない。急がせ、プレッシャーをかけると、考える時間、習得する時間、リスクに対応する時間がなくなり、結果的に進むにつれてほころびが大きくなり、それに気付いたときには簡単に取り戻すことができなくなっている。
ゆとりがないと、周りが見えずにどんどん進んでいこうとしてしまう。また、組織文化もそれを推し進めようとしているところがある。ゆっくりと考え近道を探り出す方が結果的には速い。単純なことなら、速く進めばよいが、そうでない場合は最適な進み方を考えてから開始すべき。
かめがうさぎに勝つには、うさぎが休んでいる時だけを期待していたら勝てない(うさぎは急げ、急げで休まない)。
頂上に行くまでが複雑であれば、近道を探すか、うさぎよりも速い乗り物に乗るか(技術力と頭脳を使って速い乗るものを作る)、自分の得意な道(例えばかめなら、池を泳いで渡るところなら、うさぎに勝てる)を進むか、いろいろな方法があるはず。
今回、組織文化や管理についても考えさせてくれることが多かった本です。