第39回目「ゆとりの法則 Slack」(トム・デマルコ著)(その1)
「熊とワルツを」に引き続き、デマルコの著書です。この本も常識として思っていたことを、いろいろと再考させてくれます。
今回も各個所で気付くところがあり、3回シリーズとします。
1回目:第Ⅰ部 ゆとり、第Ⅲ部 変化と成長
2回目:第Ⅱ部 本当に速く仕事をするには
3回目:第Ⅳ部 リスクとリスク管理、考察(まとめ、気付き)
第I部ゆとり
- 中間管理職の任務:再生→ゆとりの時間帯におこる
- 徹底的に合理化した組織:変化する能力が失われる
- あらゆる変化の源=ゆとり:まったく忙しくない時間、変化の潤滑油
- 「過去には最も適用できるものだけが生き残った。現在は、最も速いものだけが生き残るのだ。」(ビル・ゲイツ)
- 最もよく使われる手抜きの方法:個々の労働を完全に代替可能とするものと仮定すること
- 仕事の分割:機械的な切り替え作業にともなうロスが発生
- 仕事の切り替えにともなうロス=新しい作業に移行するときの機械的作業+悪いタイミングで中断したことによる機械的作業+思考的作業の没頭にかかる時間+フラストレーション(感情的没頭)+チームの結束効果の損失
- 知識労働者:代替可能でない
- 急げ、急げ、急げ:組織が誤った方向へ進んでいる音
- 人:言われたとおりには動かないもの
- 管理権限:管理者が一手に握っているものではない、組織全体に広がっているもの
- ゆとりを組み込む効用:①柔軟性(組織を継続的に改変していく余地がある)、②人材を維持しやすい、③投資する余地が増える
- 変化=投資
- 変化に対応する余裕が必要→ゆとり:変化に投資する手段
- 重要なのは優秀な人材だけでない、全員が大事→その人が辞めれば資産がなくなる
- 人的資本=ふつうの速さで仕事ができるまでの期間×(給与+間接コスト)×50%
- 創造のために必要な最大の資源=ゆとり
- 1円を節約しても1円の利益にならない
- ゆとり:一種の投資→ゆとりを無駄と考えず投資と考えること=ビジネスを理解している組織と単に忙しい組織との違い
第Ⅱ部:本当に速く仕事をするには(第2回目に記載)
第Ⅲ部:変化と成長
- ビジョン:建設的な変化のために必要
- 変化が成功するためには→組織の存在意義が何かを明確に理解している必要がある
- (ドラッガーの言う)文化:変化できない、変化しない、変化してはならないもの=建設的変化を築くための土台
- 成功するビジョン宣言:①現在の真実に関する要素が必要、②提唱する未来の真実に関する要素がある
- リーダの仕事:意思を生みだすこと
- リーダーシップに必要な要素:①方向性の明示、②短期的には痛みが伴うことを率直に認める、③フォローアップ、④フォローアップ、⑤フォローアップ
- リーダーシップ:十分な力がなくても成功するのがリーダーシップというもの
- 本物のリーダーシップ:権力の届かない範囲の人たちを参加させること
- リーダーシップ⇔フォロワーシップ
- フォロワーシップ倫理の問題点:リーダーシップが選ばれたエリートだけのもの
- 活気ある企業:フォロワーシップの倫理は存在しない
- リーダーシップ:交替で担うもの
- 変化するため→必ず何かを捨てなければならない
- 変化の最中:どんな失敗でも、教訓を伝えるものとして尊重されるべき
- 不当に信頼を得る方法を使わなければ、信頼に足ることを示すこともできない
- 成功するための唯一の手段:まだ得られる理由のない信頼を得ること→信頼を与えることによって信頼を得る
- 信頼を与えること:与えられた側は、ほとんど無意識のうちに、相手に忠誠を返す(人に何かを任せる、責任を与えることで信頼を得られる)
- 成長:すべての船を浮かび上がらせる上潮
- 成長している期間:変化に対する抵抗も少ない=変化を導入するには最適の時期
- 中間管理職の重要な役割:再生
- 中間管理職が有意義な変化を計画し、それを実現するには、協力しあう必要がある
- 変化:リスクなくして起こらない
- ある程度の失敗が許される環境でないと、リスクをとることはできない
- チームの存在:目標が調整され、メンバー全員が同じ方向へ進める
- 管理能力:具体定を見て、有能なコーチの助けを得たり、一緒に学ぶ人と経験を分かち合ったりしてこそ身につく
- 管理チーム:本当のチームでない→チーム=一つ以上の作業成果を共有し、それに対して共同責任を負う人たちのグループ
- 変化と学習:組織図の中間の空白地帯で起こる
- 兄弟間での競争の発生:ある種の栄養不良のせいである場合が多い→競争が発生したり、少なくとも黙認される原因は、たぶん上層の管理者がケチで厳しい権威主義的な態度をとっているため
- 競争:権威主義的な管理者のもとで起きる→ゆとりのない組織は権威主義になりがち
- 訓練:時間がかかること
- 訓練=新しい仕事を、ベテランよりはるかにゆっくりやることによって練習すること
- 遅いという特徴を欠いた訓練:学習しないための練習
- 本当の訓練:「急げ」という指令とは相容れないもの
- 学習する組織へ:①組織から内部の競争を排除し、管理者同士で協力・協調・共有、②新しい技能をベテランよりはるかに遅い速度で練習する機会を与える
- 変化の時期:報酬がなければならない
気付き
限られた人数で複数の仕事を実施するため、中には仕事を分割してしまうことがある。結果的には、生産性を落としていることに気付いていない。
ソフト開発では、技術の入れ替わりの速さ、海外からの安く優秀な人材の流入、製品価格の低下があり、急げ、急げ、急げの組織は多いのではないだろうか。そうすると、周りが見えなくなり、ゆとりがなくなり、結果的に変化に対応できずに取り残されるのかも知れない。神田昌典氏の言葉であったと思うが、「競走馬はコースを外れないように目隠しをされている、少し視野を広げると青々とした芝生が広がっている。リラックスして周りを見れば、いままでみえかったことが見えてくる。」といったものがありました。リラックスして周りを見る=ゆとりを持つことと理解すれば、ゆとりのなさが組織の可能性を小さくしていると考えられる(勿論、組織だけでなく個人にとっても同様)。
また、信頼を得る方法についても、「信頼を得るためには、信頼に足ることを示しなさい」という考え方が信じられているが、そうではなく、信頼は与えることによって得られるものである。つまり、人に何かを任せる、責任を与えることで信頼を得られる。
管理チーム(ソフト開発でいうと品質管理チーム、プロジェクト管理チームに相当すると思う)は、本当のチームでないというのも分かる気がします。チェックや指摘をしてくれるのはありがたいのですが、開発側と一体となってプロジェクトを進めているという感じはしません。責任の一旦を負うことで本当のチームとして認められる。
他にもいろいろと気付かされることがあります。
次回も楽しみです。