第38回目「熊とワルツを リスクを愉しむプロジェクト管理」(トム・デマルコ、ティモシー・リスター著)(その3:最終回)
「熊とワルツを リスクを愉しむプロジェクト管理」の第3回目(最終回)です。
この本に興味を持てば→
プロジェクトマネジャ養成講座(メルマガ)の好川氏も書評されています→ビジネス書の杜
他には一プログラマのblogさんでも紹介されています→一プログラマのblog
1回目:リスク管理について(第1部、第2部、第4部、第5部)
2回目:リスク管理の方法(第3部)
3回目:考察(PMBOKとの比較から)とおまけ(RISKOLOGYのユーザマニュアルの日本語訳(意訳))
おまけについては、かなり意訳しています。本書も参考にしてますが、実際の意味と異なっているところが多々あるかと思います。原文も参考にしてください。また、どなたか改訂して頂ければ幸甚です。
RISKOLOGYは以下のサイトでダウンロードできます→RISKOLOGY
タイガーのフォトリー日記版の日本語訳(意訳)はこちらからダウンロードしてください(ファイル保存にて保存してください、ワード(2002)で作成)→意訳版
<学ぶこと>
<対象>
- プロジェクトマネジャー
- 管理者
- PMP受験者
<Principle>
<考察>
1.リスクの数量化
リスクは数量化する。これは、PMBOKの定性的リスク分析、及び定量的リスク分析のツールと技法に当たる。数量化、可視化することで、リスクの大きさを把握しておくことができないと適切な対応方法が設定できない。また、リスクは変動するものがある。従って、常にリスクを監視しておく必要がある。特にここでは、スケジュールの不確定を図にして、スケジュールに対するリスクを明確にしておくことを推奨している(そのツール:RISLOLOGY)。スケジュールに対するリスクは3σ、PERTの3点見積り等がPMBOKには記載されている。本書では一歩進んで、どの程度の確率で推移するのかをステークホルダーで確認しておくことが重要であると述べている。また、管理者が(リスクの)不確定幅を受け入れることができる組織でないとリスクをシェアできない。数量化については、移行指標(リスクの実現を最も早く実用可能な精度で示す指標)と、リスク・エクスポージャー(抑制コストの「期待値」、コスト×確率)についても必ず数量化しておく。また。リスクの対応策を考えるには、「価値」を考えて実行することを忘れてはいけない。
2.リスクの対応
本書では、リスクについてできることとして「避ける」「抑制する」「軽減する」「かわす」とある。恐らくこれらは主に、PMBOKのリスク対応計画のツールと技法である「回避」「軽減」にあたると思われる(PMBOKでは他に「転嫁」「受容」がある)。
また、危険的対応措置を事前に決め(PMBOK:トリガー(リスク識別のアウトプット)に関連)、リスクを常に監視するについてもPKBOKで言っていることと同様。リスク管理の戦術として、わからないことについてわかっている(または知りえる)ことは何かを自問することは、マネジメント予備をちゃんと考えておく必要があることも含んでいると思われる。
3.その他考察
PMBOKと照らして考えていくとより一層分かり易い。PMBOKでのリスクマネジメントを実際に、どこまで考えるか、なぜリスクを管理すべきかについて一歩突っ込んで記載されている。恐らく、自分のPJの進めかたを比べてみて「はっとする」気付きを与えてくれることが多いのではないだろうか。アメリカの方が全般的にリスク管理は進んでいると思われるが、ソフトウェアマネジメントについては、日本とあまり代わらないのかも知れません。
一つい言えることは、リスクは勝手になくなってくれない、適切なコントロールが必要です。そして、コントロールするには、相手を正しく知る必要がある。相手の大きさを知らないと、どう戦っていくかがその対策が打てない。そのためには、数量化、可視化する必要がある。そして、対策を考慮する場合は、その価値を考えること。
リスクの存在、大きさを知り、早め早めに手を打っていくこと。その具体的な方法と、見落としがちな点を本書から学ぶことができます。
手法は使えて意味を持ちますが、その前に考え方を知っている必要があります。リスク対策はどのプロジェクトでも実施されていると思いますが、理論的な裏づけや、リスクにどう付き合うべきかについて、一つの考えを示してくれています。
<参考>(PMBOK 2002年版からの抜粋)
※ PMBOKについては、別途フォトリーディングを実施します(しかも緊急に。今年度(3月までに)受験するために優先的にブログでも提示する予定)。特に、各プロセスのインプット、ツールと技法、アウトプットの覚え方に関して考えて見たいと思います(まずは合格するために憶えよう、憶え方についてアイデアを持っている人はメールしてください)。構想としては、今までのフォトリーディング、マインドマップでのでの経験を活かして「アウトプットから憶えるPMBOK」(仮称)を数回に分けてまとめて行きたいと考えています。(熊とワルツでも、リスクは結果から考えるとありました。フォトリーディングでも、速読と違うのはアウトプットを楽しむということと理解しています。そこで、PMBOKにある各プロセスもアウトプットから考えてみようとの試みです。)
以下はPMBOKから(参考まで)
1.PMBOKでのプロジェクトリスクマネジメントの定義
(1)計画プロセス
- リスクマネジメント計画
- リスク識別
- 定性的リスク分析
- 定量的リスク分析
- リスク対応計画
(2)コントロールプロセス
- リスクの監視・コントロール
2.リスクマネジメント計画
(1)インプット
(2)ツールと技法
- 計画会議
(3)アウトプット
- リスク・マネジメント計画書
3.リスク識別
(1)インプット
- リスクマネジメント計画書
- プロジェクト計画のアウトプット
- リスク区分
- 過去の情報
(2)ツールと技法
- 文書レビュー
- 情報収集技法
- チェックリスト
- 前提条件の分析
- 図解の技法
(3)アウトプット
- リスク
- トリガー
- 他のプロセスへのインプット
4.定性的リスク分析
(1)インプット
- リスク・マネジメント計画書
- 識別されたリスク
- プロジェクト状況
- プロジェクト・タイプ
- データ精度
- 発生確率・影響度の尺度
- 前提条件
(2)ツールと技法
- リスクの発生確率・影響度
- リスク等級マトリックス
- プロジェクト前提事項のテスト
- データ精度の等級づけ
(3)アウトプット
- プロジェクト総合リスト・ランキング
- リスクの優先順位リスト
- 追加分析とマネジメントの対象となるリスクのリスト
- 定性的リスク分析結果の傾向
5.定量的リスク分析
(1)インプット
- リスク・マネジメント計画書
- 識別されたリスク
- リスクの優先順位リスト
- 追加分析とマネジメントの対象となるリスクのリスト
- 過去の情報
- 専門家の判断
- 他の計画からのアウトプット
(2)ツールと技法
- インタビュー
- 感度分析
- デシジョン・ツリー分析
- シミュレーション
(3)アウトプット
6.リスク対応計画
- リスク・マネジメント計画書
- リスクの優先順位リスト
- プロジェクトの統合リスク・ランキング
- 定量的リスクの優先順位リスト
- プロジェクトの確率的分析
- コストとタイムの目標達成の確率
- 実行可能な対応のリスト
- リスク限界値
- リスク・オーナー
- 共通リスク要因
- 定性的・定量的リスク分析結果の傾向
(2)ツールと技法
- 回避
- 転嫁
- 軽減
- 受容
(3)アウトプット
- リスク対応計画
- 残存リスク
- 二次リスク
- 契約上の合意
- コンテンジェンシー予備必要額
- 他のプロセスへのインプット
- プロジェクト計画書改訂版へのインプット