第30回目「素人のように考え、玄人として実行する」(金出武雄著)

著者は、カーネギーメロン大学の教授で、人工知能、コンピュータビジョン、ロボット工学の権威です。スーパーボールで(マトリックスのように)映像を360度回転して映し出すアイビジョンシステムや、アメリカ大陸横断自動運転ロボット車の研究開発に携わっておられます。研究に対することだけでなく、プロとはどういう考えをもつべきかを教えてくれます。
先生の講演を会社で聴いたことがあるのですが、この本にも記載されている通り前置きがなく面白い話しからジョークを交えながら話されとても楽しかったです。
その時の話しで(この本に載っていないことで)印象に残ったことがあります。一つは超一流と一流の差。才能は指数関数的に開いていくということです。努力をしても最初はあまり差がでない。しかし、ある時点を越えると急激に差が広がってくる。指数関数的に差は開いてくる。従って、二流と一流の差より、一流と超一流の差の方が大きいとのこと。継続は力なりです。
もう一つは、アメリカの研究に対する公開性。どこかの惑星だったと思いますが、無人カーを着地させそれを地球からコントロールしている実験があったそうです。税金を使っての研究ということもあり、研究所に子供を招待し、子供にも惑星に着地している無人カーをコントロールさせたりしているとのことです。次の世代を担う子供に科学に対する興味を持ってもらうという意味もあるそうです。
本に記載されていることとは別のことで前置きが長くなりました。
この本に興味を持てば→素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術
幹は4つ。
1.素人発想、玄人実行

  • 研究:自然の摂理に対して「こういうふうに解かせて欲しい」などと交渉すること
  • 「考える時は素人として素直に、実行する時には玄人として緻密に」
  • 事実に対する審美眼を磨け!
  • メッセージのある研究をしろ
  • メッセージのある研究:「これができた」と言うと、それを聞いた人が「自分もできる」「自分はこうしよう」などと驚いたり、触発されたりと心を動かす研究
  • KISSアプローチ:単純に、簡単に
  • KISS:Keep it simple, stupid
  • 困難点をエクスプリシット(陽に明示)にすることが大切
  • 固定観念に縛られずに、単純に、簡単にと考え、前に踏み込んでいくことで可能性が広がる
  • 問題解決の頭の使い方
    • ①イメージを描く
    • ②足場を組み始める
    • ③足場をだんだんと高く、強くする
    • ④自信がついたら実問題を解いてみる
  • 具体的な目標を設定できる課題を選ぶこと、心配せずにねばり強くやれば必ずいいことができる
  • 「できるやつほど、迷うものなんだ」
  • イデアを昇華させるキー:「人に話すこと」
  • イデア:ひらめくというより長い間考え抜いた末の結果、思考の持続がないところいは生まれない
  • 勉強はできるに越したことはない
  • ほとんどの創造:真似に付加価値をつけたもの

2.コンピュータが人にチャレンジ

  • 問題解決能力を育てること:その分野であれ最も重要なこと
  • 本当の能力:具体的な現実にある問題を解く能力
  • 記憶力を鍛える
    • 覚える時に理解して覚える
    • どんなことを読んだり聞いたりしても自分の知っていること、経験したこととの関連を思い浮かべる
  • 記憶をアイデアや創造という問題解決に生かすためには、一つ一つを覚える時に、「わかった」と「もしそうなら」からスタートすること
  • 詰め込み教育はいけないというが、頭の中に何もなければ、考える材料を引き出すことはできない

3.自分の考えを表現し、相手を説得

  • 前置きなしに話す:ベストファースト→手持ちのカードを良いものから順に出す
  • ベストファースト法の良い点:肝心なことを先に言うので、いつでもやめられること
  • 「結果は説明ほどにものを言い」:前置きなしに単刀直入に話す=人を説得するのに有効な方法
  • 「わからせてから説明する方法を考えろ。説明してわかってもらうのは難しいものだ」
  • 「わかっているがうまく説明できない」はウソ
  • 議論する時は、対等の立場で、争点を明瞭にする
  • 英語:ひらすら大きな声で、早くしゃべる練習をすると、自然と英語らしく聞こえるようになる
  • 論文と推理小説は同じ
  • 推理小説の4つのS
    • ①サスペンス:「どうなるか」(はらはらさせる)
    • ②サプライズ:「まさか」(驚き)
    • ③サティスファクション(満足感):「解決してよかった」
    • ④シェアリング(共有):読者が探偵に感情移入
  • 「論文のタイトルと目次をみたら、うまくできているかどうかわかる」
  • 論文を書く際に最も重要なこと:一ユニットには一トピック
  • 「この論文で言いたいことはこれです」と一つしか言えないように構成する

4.決断と明示のスピード

  • 決断するためには、「知のスピード」を身につける
  • 「自分が決める」という勇気



気付き
柔軟な発想を持つためには、固定観念を持たずに素人のように自由に考えること。
そして、実行するときは玄人として緻密な計画のもとに妥協しないで進めていく。
玄人として対応するには、日常の技術力向上、勉強を怠らないこと。
いくら発想がよくても、それを実現する技術力がなければ何もできない。
MaciPodを作れたのも、PCで培った技術力があったためでしょう)
固定観念に縛られない様にするためにも、いろいろな人の考えを聞いたり、多くの本を読む必要があると思う。勿論、自分の意見を持った上でであるが。
また、玄人発想をもつためには、技術力すなわち知識が必要。知識を蓄えるためにも、専門家や本から吸収して行きたい。
(余談ですが、今回の本にも少し記載されていたが、知識を詰め込まないとそこからアウトプットできない。そいう意味では、現在見直されているが、ある時期には詰め込み教育も必要だと思う。)