第19回「情報システム投資の基本がわかる本」(小笠原泰、小野寺清人、森彪 著)

システム開発についてユーザ側の立場で記載された本です。SEにも役に立ちます。
この本に興味を持てば→情報システム投資の基本がわかる本―図解 企業ユーザーとSE必携
幹は3つ。
1.情報システム投資の基本知識

  • 勝ち組:時流に流されず、地に足のついた情報化施策を実施しているところ
  • 確固たる目的意識=情報システム投資の成功に繋がる
  • 情報システムの構造:戦略的な経営支援、経営管理のもの、実務・作業のためのもの
  • 情報システムの役割:省力化、共有化、共生化
  • IT:あくまでツール、万能でない
  • ITの取り込み時の注意:業務全体の観点から人間系と機械系を設計
  • 情報系を活用することのよって創出される効果を評価する
  • 重要なので差別可能なビジネスモデルを設計できるかどうか
  • パッケージの採用:自社への適合性をまず評価(体型に合う服かどうかを確認)
  • 投資:内部効率化、外部対応(BtoC,BtoB,BtoG)、新規事業立ち上げ
  • 情報システム実現方法の選択:自社開発、開発委託、パッケージ、ASP(サービス事業)

2.情報システム投資計画作成の実務のマスター

  • ビジネスモデル:コアコンピタンスへの集中、Faster Better Smarterな自社に利益がでる競合優位な仕組み
  • 全体計画:統一的な全体計画にもとづく情報システム開発
  • 中長期計画:個々のシステムの開発の時系列な展開を決める、開発の優先順位を決める
  • 開発の優先順位:重要度、緊急度から
  • ITガバナンスの確立:①自社のITの現状把握、②企業の戦略に沿ったIT活用の計画立案、③IT活用の推進とその状態の監査・評価にもとづく軌道修正の実行
  • 仕様検討:主要機能分析・定義、データモデル定義、インタフェース方式検討
  • 実現可能性の洗い出し:制約=環境面、技術面から
  • 情報関連コストの分類:初期コストと運用コスト
  • TCO(Total Cost of Ownership):投資コストを正確に把握
  • 投資額算定:投資総額に加え、時系列に投資金額を算定することが重要
  • リスク分析:予防的対策、防止的対策、事後的対策
  • 運用計画:運用管理、構成管理、安全管理、性能管理
  • 経営投資の妥当性評価:全体計画に従って個々に決定される

3.情報システム投資の評価

  • フィージビリティの評価:まずシステム開発計画そのものの実現可能性を評価
  • ROI(投資対効果、Return On Investment)
  • 投資評価:ROI、実現方式、管理方式、実現手段を評価
  • 効果の計測:①回収期間法(どれぐらいの期間で投下資本が回収できるか)、②投資利益率法、③正味現在価値法(将来得られる期待収入を一定の資本コスト率で割り引いて現在価値に換算した額から投資額を差し引いた正味現在価値で判断)、④内部収益率法(一定期間の投資額と現在価値に置き直した効果の差が0となる資本コストの利率を求めて比較し、高い率のほうを選択)
  • BSC(バランススコアカード)による評価:財務的な視点、顧客の視点、内部業務プロセスの視点、学習と成長の視点で総合的な企業活動を進めていく手法
  • EVMによる評価:PV(計画出来高)、EV(出来高)、AC(実コスト)、CPI(コスト効率指標)、SPI(スケジュール効率指標)
  • 開発段階における評価:内部の問題(能力不足、作業ミス、人間関係に起因する問題)、外部(パートナー会社)の問題(管理上、保守上の問題)、外部(技術)の問題(調達、開発環境)
  • 運用段階における評価 実績と差異:コスト、作業効率、顧客活動
  • 運用段階における評価:ベンチマーキング
  • ベンチマーキングの実施手順:①目的・業務対象・評価指標の策定、②自社の状況を評価、③ベストプラクティスの収集、④比較分析、改善案の策定・実施、④継続的評価



気付き
ユーザからみて、どのような視点でシステム開発を考えていくべきかが記載されている。
中長期計画を立て、優先順位に従って進めていく。
投資するにあたっては、ROI(投資対効果)を定量的に把握する必要がある。
また、開発にあたっては、自社の現状をよく分析、把握しておくことが第一に必要。
開発側(ベンダー)の考え(提案)と、自社の方向性・考えは必ずしも一致しない。
そのためにも情報システム開発の役割を明確化する。
 
開発側が読んでも非常に参考になります。
見開きで1つの内容(左ページが文章、右ページが図)なので見やすい本になっています。